シューベルト歌曲集「冬の旅」作品89 D.911(全曲)訳詞
Die Winterreise / Franz Schubert


冬の旅  ヴィルヘルム・ミュラー
訳詩:神崎昭伍

※テキストデータのためウムラウトなどは省略しています。


24 手回しのオルガン弾き


あちら,村のはずれに,
手回しのオルガン弾きが立っている.
そしてかじかんだ指で
弾ける曲を,回している.

氷上にはだしで,
あちこちとよろめいている.
そして,小きな皿は
いつまでも,空のまま.

だれも聞いてやろうとせず,
だれも見てやろうとしない.
そして犬どもが
老人のまわりで唸っている.

老人はすべてを,
なり行きにまかせ,
回す,……老人の
オルガンはいつまでも 止らない.

変った老人よ,
お前といっしょに行こうか?
私の歌にあわせて,
オルガンを回してくれないか?


Back