シューベルト歌曲集「冬の旅」作品89 D.911(全曲)訳詞
Die Winterreise / Franz Schubert


冬の旅  ヴィルヘルム・ミュラー
訳詩:神崎昭伍

※テキストデータのためウムラウトなどは省略しています。


20 道しるべ


いったいなぜ私は
はかの旅人のたどる道をさけるのか?
なぜ雪にうづもれた岩山を通る
かくれた小道を探し求めるのか?

罪をおかしてはいない,
人びとをおそれねばならぬわけではない.
どんな馬鹿げたのぞみが
私を荒野の中へと追いやるのか?

道しるべは道にたち,
あちこちの街を指している.
そして私はかぎりもなく,
安らぎもなく旅し,安らぎを探し求める.

一本の道しるべが眼前に
じっと立ちつくしているのを私は見る.
一つの道を私はたどらねばならない.
だれもまだ戻って来たことのない道を.


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