シューベルト歌曲集「冬の旅」作品89 D.911(全曲)訳詞
Die Winterreise / Franz Schubert


冬の旅  ヴィルヘルム・ミュラー
訳詩:神崎昭伍

※テキストデータのためウムラウトなどは省略しています。


2 風見の旗


私の美しい恋びとの家の上で,
風が風見の旗とたわむれている.
するともう私は妄想につつまれて考えてしまう,
逃れて行く哀れな男に嘲りの口笛を吹いているのだと.

高だかとかかげてある,その家の紋章に
もっと早く気づくべきだった.
そうすれば,その家に,心変らぬ女性を
探し求めたりは決してしなかったろう.

風は屋根の上と同じように,家の中で
人びとの心とたわむれる.そんなに音高くないだけだ.
どうして人びとが私の苦しみをたづねたりしようか.
その家の児は豊かな花嫁なのだ.


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